前回の記事から日にちが空いてしまいました。1ヶ月分を取り戻すべく投稿していきます。
酒井さんの器で1枚だけ継いでいるものをご紹介しました。今日は練り込みの器の継ぎについて書いてみます。
練り込みの器の断面
練り込みは、小さなパーツの陶土をくっつけて、金太郎飴のようにカットして作ります。割れたスクエア皿を次の素材として教室に持参したときに、長年、金継ぎも陶芸もされている先輩方から言われた言葉。
「とても上手な作り手さんだね。割れ目が、衝撃のひびの通りに割れてる。上手くない人だとこのパーツの通りに割れてしまうのだよ」
なるほど、そもそも練り込み作品としても表面がとてもなめらかなのも、しっかりと圧縮された強固な生地だからこそ。さらには割れたときも、「そのうつわの」割れ方なのですね。意外なところで新しい発見がありました。
割れたものは接着が難しい
逆にいうと、私の接着が下手だと模様が合わなくなります。横にもそうですが、縦にもずれると表面に凹凸ができてしまいます。これまで欠けの金継ぎはしたことがあったものの、割れたものを継ぐのは初めてだった私。接着はしたものの、ズレてしまったので、一度はがして接着し直しています。せっかちな私には、がっかりした工程でしたが、ここは近道をするわけにはいきません。
無施釉のところが汚れやすい
裏は釉薬がかかっていないので、ちょっとしたことで漆がついてしまいます。例えば水研ぎといって、少しだけ水を含ませてサンドペーパーで磨くときなど、無心になりすぎると危ういのです。また、奥の花瓶のような白い素地はもっと汚れが目立ちます・・。
へんてこなマスキングテープとプチプチは、塗ったところが作業台に触れないように、足をつけています。
茶色くみえる 白漆とは?
最初のうちの工程は、磨いて漆を塗ってと共通なのですが、最後の仕上げをどうするかを、そのうちに決めていきます。金を蒔く?漆で仕上げる?その漆はどの漆にする?と、大変な作業のなかで仕上がりを考えるひとときはちょっとワクワクします。今回はうつわの色合いが優しい3色だったので、白漆をのせることにしました。
白漆とはいえ、写真のようにミルクティー色をしています。漆はもともとが黒みがかった透明なもの。そこに白の顔料を混ぜるので、茶色のように見えます。真っ白でないのが理由を聞けば分かります。また、塗って日にちがたつとどんどん明るく透明感を増していきます。そうやって変化していくのも、楽しみの一つです。
仕上がり
心配した裏側もなんとか綺麗に出来上がりました。マットな肌面に静かなツヤのコントラストも良いですね。休み休みながらで1年かからないくらいの作業日数でした。
角丸の酒井さんのスクエア皿に、直線的な練り込み模様。割れたからと諦めるどころか、そこにやさしい白漆の化粧を入れてふんわりと仕上げてみました。
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